化粧品は複雑な化学薬品が組み合わされています。これが、衣類に付着すると、素材や染料に意外な影響を与えることがあります。 |
パーマ液の主成分は、1液が還元剤、2液が酸化剤です。還元剤が綿や麻素材などに付くと、クリーニングの乾燥工程やプレスなどの加熱でより激しい変色が起きます。衿周り、特に背中側に多く見られます。
香水の主成分はアルコールです。アセテート製品の染色はアルコールによって溶け出してしまうことがあります。衿周り前側に発生しやすいトラブルです。
マニキュアの除光液は、アセテート繊維そのものを溶かしてしまいます。しみ状に硬くなったり、ガムが付いているように見えることがあります。
ヘアムースの中には、髪の毛を固める樹脂剤が含まれています。これが、生地に付着すると取れにくくなり、汚れが接着して黒い斑点になります。特にワイシャツの襟周り前後に発生することが多いです。
次亜塩素や塩酸、硫酸などの薬品も、日常生活の中にあります。塩素や硫酸などは、綿、麻、レーヨン、テンセル、アセテートなどの植物系繊維に穴を開けてしまいます。
カビ取剤、台所用洗浄剤、洗濯用塩素系漂白剤の主成分は、次亜塩素ナトリウムです。この薬剤は植物系繊維製品などの染色を退色させます。飛沫状の色抜けや、斑点状の変色になっている場合があります。
市販のトイレ用洗剤には、強酸である塩酸が配合されているものが多くあります。 塩酸が植物系の繊維に付着すると、繊維を酸化変色し、穴があくほど弱くなっていしまうことがあります。また、ポリエステル混製品の場合、生地が溶けて半透明になったように見える場合もあります。 |
自動車やバイク、ボートなどに使われているバッテリー液は、希硫酸という強酸。衣類に付着すると穴をあけてしまいます。ドライクリーニングでは落ちにくく、乾燥などの加熱工程で、穴があいてしまうことも多いようです。濡れたようなシミは、揉んでみて、穴があけば強酸の影響です。
もし人間が裸で暮らしていたら、体中に擦り傷引っかき傷などが絶えないはずです。そのかわり、衣類が擦り減ったり、ほつれたりしています。
ワイシャツは、繰り返し長時間にわたって着用される実用的な衣類で、消耗の限界まで着用する方も多いと思います。細番手高級ブロード品ほどスレに弱く、襟周り、剣先、袖口、ヒジに注意。洗濯工程で擦れて弱っている部分がほつれたり破れることがあります。 |
絹、麻、テンセル製品は繊維の構造から、擦れるとより細かい繊維に分裂します。特に濃い色の製品は、クリーニングで油汚れが落ちると一層毛羽立って白っぽくなってしまいます。肘やポケット周り、ズボンなら大腿部分などにスジ状に発生することもあります。
シワ加工品は着用・クリーニングで必ず広がります。また、ゴム製品は着用・クリーニングで必ず伸びますので注意が必要です。
ネクタイのほとんどは絹製品で、擦れに弱く特定の部分だけが擦れて柄が擦り切れたり、穴があいたりします。ネクタイの擦れは、絵柄を浮き立たせるたて糸が最初に損傷します。上着のラベル(衿)と接触する部分に注意が必要です。クリーニングで、擦れた繊維くずが脱落して穴があきます。 |
カシミヤやラムウールなど、細く柔らかい繊維製品は毛羽立ちやすく、擦れると毛玉が発生しがちです。編み物、織物にかかわらず、獣毛繊維一般に毛羽立った後、毛玉が発生します。
害虫が噛み荒らした繊維くずを洗い落とすため、目立たなかった穴も、クリーニング後、目立ちやすくなってしまいます。①素材が毛や絹などの蛋白質繊維である。②食べられてしまうことから、繊維が消失している。 ③被害が芯地にまで及んでいない。④繊維の消失が不規則に発生している(鋏などで切り取った場合は繊維の切断面が規則的に並ぶ)。⑤電子顕微鏡で観察すると、噛み切ったスプーン状の歯型が見られる等の特徴があります。羊毛、カシミヤ、モヘヤ、アンゴラ、絹、皮革製品などの動物性蛋白質繊維は、繊維自体が養分となるため、汚れの有無にかかわらず、室温15℃以上で、通気性が悪く湿度の高い状態で保管していると、害虫が好んで食べることになります。衣類に付く害虫は、カツオブシムシ類の幼虫、イガの幼虫などですが、まれにゴキブリも虫害をおこします。 |
カビは、一定の湿度と温度によって蛋白質やデンプンなどを養分として繁殖します。特に、クリーニング後にポリ袋などに入れたまま保管したり、通気性の悪いクローゼットで保管していると湿気が停滞する状態になります。梅雨時期などは結露することもあり、カビの繁殖を促すことになります。様々な色のカビがあり、一見すると黄色や青シミのように見える場合があります。染料を分解し変色させることもあります。大切な衣類は、定期的な虫干しなどの風乾をしましょう。
この特徴は、保管中に折りたたまれていた折り目に沿って、ガスの触れやすい部分にだけ変色が起きることがあります。全体を広げたときに、帯状に変色が起きていれば、ストーブや湯沸かし器などによる酸化窒素ガスや亜硫酸ガスが原因と考えられます。また、コートやジャケットなどクローゼットに吊るして収納するものは、ドア側の肩口から袖口にかけて外側が帯状に変退色します。素材としては、アセテート、ナイロン、綿、麻などの淡色系の繊維製品でガスとともに湿気もその原因となるので、収納中の湿度管理や虫干しなどを行う必要があります。
ポリステル、ナイロンなどの低融点の素材に発生しやすいのがタバコなどの熱による損傷です。本人がタバコを吸わなくとも、すれ違いざまに歩きタバコの影響を受けることがあります。また、灰が落ちた場合などに穴あきの損傷が起きることがあります。 |
汗や日光による退色は、植物系の繊維製品に起こりがちです。染料が汗の影響を受けやすいことが原因です。汗のつきやすい衿周りや肩、背中、脇などを特に注意する必要があります。また、色の種類によっても、紫、青、赤、緑、黄色の順に変色しやすく、濃い色ほど変退色の差が目立ちます。クリーニングに出す際はくすんでいるため見落としがちですが、クリーニングによって、変退色した部分が目立つようになってしまいます。衿を裏返すだけで、日焼けしていない元の色と比較確認できます。 |
白い衣類のほとんどは、蛍光増白剤という染料で染められています。この蛍光増白剤は、長時間紫外線にさらされると黄色味を帯びてくるという性質があります。また、繊維本来の性質として、紫外線によって黄ばんでしまうという性質もあります。これは白い紙が時を経ると黄色くなるのと同じですが、特に絹製品は紫外線の影響を受けやすく、黄ばみやすい性質があるのです。紫外線の影響を受けにくい衿裏と比較してみましょう。
ポリウレタン樹脂は、生地の表面に塗られた(コーティング)合成皮革製品として主に使われています。ポリウレタン樹脂は、紫外線や水分によって分解(加水分解)するという性質があり、保管や手入れの状態にもよりますが、3年から5年で剥がれたりボロボロになったりします。クリーニング以前に、剥がれたりボロボロになっていなくても、すでに経時劣化している場合、クリーニング作業工程によって、剥がれ落ちてしまうこともあります。衿周りやヒジなどの関節部分をよく見て、水泡のような泡状のふくれがあれば、剥離が始まっている証拠です。
糊無し、糊弱いを希望される場合、出来るだけ番手の細いものを選んでください。 糊かためを希望される場合、番手の粗いもののほうが糊が吸収しやすいです。 衿、カフス、前立てがつまる品が増えております。縫製時に芯地を地づめ加工を施していない商品が多く見受けられます。収縮した場合、返品可能かどうか、購入時に販売店に確認すると良いと思います。 ワイシャツの衿元に革、他の布地、カラーボタンは、お薦め致しません。破損した場合、メーカーに同じものは手に入りません。普通のボタンを選んだ方が良いと思います。 |
毛皮、ボタン、合成皮革、金属、ガラス類などの付属品が付いているものは取り外しがきくか、クリーニングが可能か確認してから購入することをお薦めします。
スパンコールやベルト、ボタンでボンド接着のものはクリーニングが出来ません。
海外製品は、基本的に染の段階から基準が違いますので、色落ちする商品があります。ご納得の上、お買い求め下さい。